「大学力」レーダーチャート ~大規模私立大学28校の分析と評価

2013年2月4日   調査報告

2010年12月『危機の時代の大学経営』と題するシンポジウムを開催した際、公表されている大学基礎データと補足アンケートをもとに関西の私立大学30校についてレーダーチャートを作成し、各大学の特徴、強み弱みを浮き彫りにする報告を大学名を伏せて行いました。

このレーダーチャートは絶対評価ではなく、同規模大学相互の比較(在籍学生数1万以上、5千人から1万人、5千人未満の3つのグループに分類した)により、特徴づけを行うものであるため、大学名を明記してこそ課題発見の糸口になるものでした。常々すべてをオープンにして議論する機会を得たいと考えていましたので、対象大学を関西に限定したものは全国とりわけ首都圏の大学の動向を踏まえた分析・評価には至らず、たとえば大規模大学は僅か7校の相互比較に止まり、地域的近似性を超えた特徴把握に必ずしも成功したとは言えませんでした。

そこで、今回は全国の大学を対象としてレーダーチャートを作成し、それをもとに各大学の「大学力」を分析・評価することとしました。つまり、それぞれの大学が有する各種のリソースをバラバラに並べて順番をつけて、今はやりのランキングを行うことではなく、教育研究機関である大学を経営体として総括し、そのうえで個々のリソースの経営における特徴づけを行うことを意図しました。それは、文部科学省(以下文科省)が「大学改革戦略プラン」の中に位置づけて検討を進めている「大学ポートレート」構想に先行し、客観的な大学評価を可能にする試みとなるものと考えています。

今後総合的な大学のデータベースがこの「大学ポートレート」によって開示されれば、我々の分析もより精度の高いものになると期待しています。今回分析したデータは、昨年度より公表を義務付けられた「教育情報」、自己点検・評価報告書に添えられた「大学基礎データ」を中心に、各大学のホームページに記載されている各種のデータの中から「大学力」の構成要素として活用可能なものを抽出した。しかしながら「大学評価・学位授与機構」「大学基準協会」「高等教育評価機構」等のいわゆる第3者評価機関のそれぞれの評価基準に微妙な違いがあり、それに従って大学が提出する報告書と添付データに濃淡があるため、同一内容を示すものであっても大学によりその扱い、算出基準に違いがあると想定されるケースも散見されました。したがって、すべての大学を統一した基準で分析・評価することは残念ながら現状では不可能と思われます。

そこで今回は情報公開に比較的積極的で、その動向が全国の大学に強い影響力を持つ大規模私立大学28校に限ってデータ収集し、その28大学を串刺しにすることができたデータに絞り込んで相互比較し、レーダーチャートを作成することにしました。それでも、前回同様「大学力」の構成軸として整理した「入学力」「教育力」「学士力」「国際力」「財務力」とそのそれぞれの構成項目は、大学のリソースのすべてを語りつくしているものではなく、28大学を辛うじて串刺しにできた項目を並べて相互に評価したに過ぎません。

今後「大学ポートレート」で公表されるデータにより、レーダーチャートの各軸とその図形に変化が生じることも十分あり得ると考えています。


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