『Flourish』はグラフをビジュアライズして動的に見やすくしてくれるサービスサイトで、データの可視化を表現するのにかなり印象的なインパクトを提供できます。その象徴的なものは「bar chart race」の手法で、日本の人口の推移を都道府県別にみるさまざまな試みがYouTubeやSNSで話題になりました。
百聞は一見に如かずで、同じようなことをやってみました。
日本の人口の推移について、1920年から2020年の「100年の歴史」は、東京の一極集中が強力に進み、それに伴う神奈川・埼玉・千葉の首都圏近郊の拡大の過程を改めて視認することができます。
若者世代(0-19歳人口)の人口の減少率を都道府県別でみる
「危機の時代の大学経営」をテーマに大学の将来像を占う大学問題研究所では、今後の少子化についても考察しています。
若者世代(0-19歳人口)が都道府県別にどういう推移をしているのか?
このコラムではこの深刻な状況の一端を把握するためにデータの視覚化について試行錯誤してみました。単純に人口の人数比較では既に都道府県での数字に大きな差異があるので、「2000年の都道府県ごとの人口を基準」に各地域ごとの減少率の推移を通じて『Flourish』で地域の傾向を表示してみました。
結果としては周知の事実には違いませんが、データの視覚化を通じてより鮮明に窮状が伝わるように共有したいと思います。
■ 上位15都道府県
上位15都道府県というのは人口減少の割合が低い地域です。驚くべきは東京の若者人口は増加している時期も経て2000年の水準を概ねキープしています。しかしながら最近は上位層でも8割台、7割台を示し、少子化が進んでいる府県が増えてきています。
21世紀当初では北陸・東海地域は上位にきていましたが、関西圏が盛り返し首都圏の次に位置してきました。ただし大阪府が一番という訳ではなく関西圏として少子化に歯止めをかけようとしています。なかでも滋賀県が上位にきているのは子育て環境が充実して住みやすい地域になっているのでしょうか。
愛知県や福岡県が上位なのは東海や九州における偏りが懸念されます。沖縄県が上位にきているのは移住が多くなっているのでしょうか、検証は今後の課題です。また広島県や岡山県、香川県が近年ランクインしてきているのも特筆すべきことかもしれません。
■ 下位15道県
下位15府県というのは反対に人口減少の割合が高い地域で、2000年基準の6割台以下を示しています。2011年の震災以前でも東北地方は少子化が著しい状況でしたが、軒並み5割台に至る逓減というのは、追い打ちをかけた震災の影響が極めて大きいと言わざるを得ないと思います。傾向というのは本当に怖いもので、僅か20年で若者の人数が半分近くになってしまうというのは残念で仕方ありません。
また各地域間で近郊の人口の取り合い競争を想像してしまうような格差が露呈しているようにも思えます。北海道では札幌の都市部のイメージは強いですが、面積が広いがゆえに、北海道の人口全体としては上位層に位置しているのに、若者層が下位という典型的な少子高齢化状態に陥ってきているのかもしれません。
今後の教育の環境
教育の価値観が多様化し教育格差も広がる一方で、ますます進む少子化は地方にとって喫緊の課題と思われます。進学塾やネット教育の環境が充実して、一般的に優秀と呼ばれる人材は都市圏への受験を目指し、地方における高等教育が空洞化していく懸念が更に広がりそうです。
しかしながら、地方でも「暮らし」を重視した住みやすい環境が整う地域の実例もでてきています。これからは都市圏とは異なった人材を輩出する努力や政策が望まれます。また、都市圏で成長した社会人がその培った経験や人脈を活かした形で地方に戻り、地域貢献しようとする人材の発掘やそういった志向が育まれることがより重要視されると考えます。